小学校教員にょんの日々ログ

毎日の出来事や考え、思ったことなどとにかくアウトプット!

修了式② 80

前回、受け持った子どもたちがやってくれた

修了式でのサプライズについて書いた。

 

yamanyo.hatenablog.jp

 

実は、それとは別にもう一つ、

どうしようもなく心を動かされることがあった。

今回はそのことを記録しておこうと思う。

 

それは、クラスみんなからのサプライズが終わった後のことだ。

隣の空き教室を使って、

一人ずつ呼んで成績表を渡し、少し話す。

今年度、私のクラスで毎学期やっているスタイルだ。

 

今回もそのスタイルで一人一人呼んでいった。

 

 

クラスに一人、2学期から転入してきた子がいる。

名はMくんとしておく。

家庭の事情で2度の転校を経験しており、

2度目の転校先がうちの学校だった。

かなり遠くから転入してきたので、

その土地土地での文化や習慣の違いに慣れるまでにも

時間がかかっただろう。

方言も違う。

うまくなじんでやっていけるのか、

本人はすごく心配で不安だったことだろう。

でも、クラスの子どもたちは、

とてもやさしく、

わからないことを積極的に教えてくれたし、

毎時間のように遊びに誘ってくれて、

気付けばすっかりクラスになじんでいた。

Mくんは勉強が苦手だ。

宿題も、最初のころは、やってこないことも多く、

それをごまかしたりすることもあった。

 

そんなMくんに成績表を渡す時が来た。

手渡したときに、Mくんに少し話した。

 

「学期途中からの転入で、不安もいっぱいあったと思うけど、

 この一年で、すっっっっごい伸びたよ。

 いろんなところで成長を感じられてとてもうれしかった。

 苦手な算数にも自分から復習に取り組めるようになったし、

 宿題も自分できっちりやる習慣もついた。

 スピーチ練習で自分の弱点を克服しようとして、

 繰り返し練習に励んでいた。

 そんな一つ一つが、Mくんの成長に大きくつながってる。

 でも、今Mくんが見せてる成長は、まだまだ序の口。

 Mくんの可能性は、もっともっと先が見えないぐらいでかい。

 全体を10やとしたら、今年見せてくれた成長はまだ1ぐらい。

 こんだけ、すごい成長見せてくれたけど、

 それはMくんの可能性全体から見たら、まだたったこんだけやねん。

 だから、これからも自分のペースで努力を続けていきや。

 絶対まっだまだ伸びるから。」

 

まっすぐ目を見て、うなずきながら聞いてくれた。

そして、握手をして、次の子を呼んできてもらおうかと思った時だ。

 

「先生、これ。」

 

そう言ってMくんは、二つ折りになった画用紙を渡してくれた。

表紙には学校の校章が色鉛筆で描かれていた。

その表紙が何を意味するのかは見てすぐにわかった。

 

「あゆみ」

 

そう書かれたそれは、「私の成績表」だった。

もちろん、Mくんの手作りである。

ドキドキした。

毎学期、私から成績表を渡される子どもたちもいつもこんな気持ちなのか。

 

「昨日、一生懸命考えて夜書いたから、読んで。」

 

少し恥ずかしそうにそう言ったMくん。

 

 

全員の成績表を渡し終え、教室に帰った私は、

休み時間に友だち同士のおしゃべりに夢中になる子どもたちをよそに、

Mくんからの成績表をこっそり開いた。

そこには、彼の癖のある丁寧な字で私に対する評価がずらりと並んでいた。

 

勉強をじょうずにおしえていた。   →よくできた〇

おこりかた。            →よくできた〇

字のきれいさ。           →よくできた〇

勉強のわかりやすさ。        →よくできた〇

おもしろさ。            →よくできた〇

30分休みに遊んでくれた。      →よくできた〇

仕事をがんばっていた。       →よくできた〇

学級通信をいっぱい書いてくれた。  →よくできた〇

4年1組のめんどうをみていた。    →よくできた〇

4年1組を大切にしてくれた。     →よくできた〇

いろいろなアイデアをかんがえていた。→よくできた〇

やさしさ。             →よくできた〇

いろいろがんばっていた。      →よくできた〇

あきらめずになんでもしていた。   →よくできた〇

4年1組のためにいろいろしてくれた。 →よくできた〇

 

【メッセージ】

ぼくは、2学期にはいってきてさいしょはなれなかったけど、

なれてきて4年中の先生で1番がんばっていた。

あと4年1組のためにやさしくしたり、

あきらめずになんでもしてくれてありがとう。

 

Mより

 

 

オールAって。

評価高すぎるよ、Mくん。

先生はそんなにできてないよ。

 

視界が涙で霞んで、

せっかく書いてくれた成績表がよく見えない。

目の前に子どもたちがいなければ、号泣していた。

もらいすぎなほどの幸せをもらった。

顔を上げる。

Mくんと目が合う。

私が読んでどんな反応をするんだろうと、

気になって様子をうかがていたようだ。

 

そして、少しして私のところにやってきたMくん。

成績表の感想は聞いてこない。

きっと照れくさいんだ。

恥ずかしがり屋のMくんらしい。

 

すると、

「先生、これ。お父さんが、先生に渡してって。」

そう言って、封筒に入った手紙を渡してくれた。

 

Mくんのお父さんとは、

転入初日、会議室で一度お会いしてそれっきりだった。

何だろうと、少し緊張しながら、封を開けた。

中には、きれいな便せん2枚にわたって、

これまたきれいな字で文章が綴られていた。

 

 

「にょん先生へ

 このような手紙で失礼します。

 

 息子は○○県から急に大阪に来ることになり、不安などがたくさんあったと思います。

 

 そんな中、息子は、にょん先生と出会い、多くのことを学び、人として大きく成長しました。

 

 親として、どうすればいいのか悩む日々の中、本当に良き先生に出会え、大変感謝しております。

 

 息子は、今回のにょん先生の異動につき、更に大きく心が成長したと思います。息子から『何かしたい』と話しながら泣き、そして『今までで一番よくしてくれた先生だ』と言っていました。

 

 今までこのようなことは聞いたことがなく、本当に先生のことが好きなんだと思いました。

 

 思い返せば、自宅ではよく

 『今日はにょん先生とサッカーをして楽しかった。』

 

 『昼休みに先生がギターを弾いてくれた。』

 

 等、たくさんのことを話してくれました。

 

 息子にとって忘れない大切な4年生になったと思います。

 

 少しの間でしたが、本当に本当にありがとうございました。

 つたない文ですみません。」

 

この感動を、感情を言葉にするには、

言葉はあまりに無力だった。

 

どう表していいのかわからない。

どう表しても表しきれない。

大きすぎるこの感情につける名前がない。

 

やっぱり最高の仕事だ。

こんなに魅力的な仕事を自分はさせてもらえているんだ。

でも、まだまだだ。

ここで満足しちゃいけない。

全ての子どもたちの成長をサポートできるように、

全ての面で磨かなければいけないことがたくさんある。

こうして前を向き続けられるのは、

子どもたちや、それを見守るおうちの人たちのおかげだ。

だから、そんな思いを裏切ることのないように、

これからも精進していかなければいけない。

 

 

でも、今は、

少しだけ、

束の間、

この名前のつかない感情を

味わおうと思う。

それぐらいは、

バチは当たらないはずだ 笑