そういうとこやぞ。 69
クラスで超がつくほどのド天然男子、アルパカくん(仮名)。
ちょっと人の話を聞くのが苦手。
でも、めちゃくちゃユーモアがあって、面白くって、愛されキャラ。
昨日の給食前のこと。
ふとアルパカくんの机を見ると、
ナフキンが敷かれていない。
彼は、ほぼ毎日、ナフキンを敷かずに給食を食べようとする。
そして、私は彼に告げる。
「アルパカくん、ナフキン敷いて食べやー。」
「ああ!しまった!忘れてたぁぁ!…ひひひ。」
全く「しまった!」感がない。
この日も彼に声をかけた。
いつものやりとり。
変わらないやりとり。
…のはずだった。
しかし、そこにいたのはいつものアルパカくんではなかった。
「アルパカくん、ナフキン敷いてから食べやー。」
すると、彼からは予想外の返事が返ってきた。
「うわあ、先生、今オレ敷くつもりやったのに…先に言わんといてやぁ!」
何…?!
アルパカくん、君がナフキンを敷こうとしていただと…!?
そんな風には見えなかったけど…
あかんあかん!
担任がそんなんでどうする!!
アルパカくんは今開花の時を迎えつつあるのかもしらん。
ならば、黙って暖かく見守るべきではないか。
ついつい、いつものように声をかけてしまい、
彼の変化の兆しに気付かなかった自分を少し恥ずかしく思った。
思い込みや先入観は、いつだって目を曇らせる。
それ以上、声をかけるのをやめ、
そっと見守ることにした。
「手を合わせてください。いただきます。」
日直さんのあいさつを合図に、一斉にお腹を満たそうと、給食にがっつく子どもたち。
私もそんな子どもたちにつられるようにして、給食を食べ始める。
にぎやかで楽しい時間。
顔を上げると、アルパカくんも向かいの席の友だちと話しながら、
楽しそうに食べていた。
そんな様子に心がほっこりし、
再び視線を自分の器に戻そうとした。
私の目は、自分の器ではなく、
アルパカくんの机に吸い込まれた。
ナフキン敷いてないやないかいっ!!
気づいたらそうツッコんでいた私の心には、いつのまにか見守る気持ちのカケラも残っていなかった。