小学校教員にょんの日々ログ

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桜の季節に君を想う。 70

今週、来週と勤務校を始め、近隣の小中学校で卒業式が行われる。

この季節になると、思い出す卒業式の思い出がある。

 

今から3年前。

当時私は6年生の担任をしていた。

縁あって、3年・5年・6年と、3年間担任をした子たちだった。

 

本当に人が好きな子たちだった。

いい意味で世話好き、悪い意味でおせっかい。

でも人とのコミュニケーションを厭わない子たちだった。

色々あったが、本当に楽しい3年間で、随分教師として、色々な経験を積ませてもらった。

 

卒業式練習。

呼びかけの声が、聞く者を圧倒する。

歌声の力に呑み込まれる。

一人一人、本当に小学校生活最後を悔いのない形で終わりたいという気持ちを持って、全力で取り組んでくれた。

だから、涙が次から次から溢れそうになる。

でも、私は運動会の組み立て体操ですでに泣いてしまった前科者 笑

だから、今度こそ、

「泣くもんか!涙は式当日に取っておく!」

と並々ならぬ覚悟で、

毎回少しでも気を抜くと、

決壊しそうになる涙腺と格闘していた。

 

クラスに1人の男子がいた。

縁あって、3年間の全てを担任した内の1人だ。

彼は、やんちゃで、よく指導した。

けんかもした。

すぐに手を出してしまう。

人との距離の取り方が上手くない。

勉強が苦手で嫌い。

でも、その100倍くらい良いところのある子だ。

 

卒業式では、1人1人名前を呼ばれた後、決意の言葉を言って、証書を受け取る。

彼は、「中学校に行ったら、勉強と部活を頑張りたいです。」という決意の言葉を言っていた。

少し恥ずかしそうに、体をゆらゆらさせながら。

担任をした3年間で随分背も伸びた。

決意の言葉を言っている彼を見ている時の気持ちというのは、なかなか一言で表せるようなものではない。

さまざまな形容し難い感情がないまぜになって押し寄せる。

他の子たちにしても、同じだ。

そんな練習を重ね、式当日を迎えた。

 

滞りなく式は進んだ。

そして、卒業証書授与。

一人一人しっかり顔を見て名前を呼ぶ。

みんな立派に決意の言葉を述べて、

証書を受け取っていった。

そして、彼の番になった。

名前を呼ぶ。

「はい。」と返事をする。

台に上がって立つ。

そして、決意の言葉を述べ始めた。

 

 

 

 

「僕の将来の夢は、にょん先生みたいな優しくて面白い小学校の先生になることです。」

 

 

 

 

在校生や職員、卒業生中心に会場がざわついた。

そりゃそうや。

そんなこと、練習で一言も言わんかったから。

そんなこと、練習で一言も言わんかったやんけ。

なんやねん、それ。

式後に聞いた話だが、お母さん以外には、本番でこう言うことは、伏せていたらしい。

誰も彼の式当日のこの企みを知る者はいなかったのだ。

あんな大勢の前で、緊張感もすごいだろうに、

そこで本番だけ言う言葉。

練習なんてしていない。

ぶっつけ本番。

どれだけの勇気だったんだろう。

どれだけの覚悟だったんだろう。

 

彼の言葉を聞いて、頭が真っ白になった。

本当に、会場内の一切の音が聞こえなくなり、

自分の心臓の音だけが聞こえた。

 

でも、それはほんの一瞬。

だったと思う。

わからない。

永遠にも感じられる一瞬だった。

 

危うく次の子の名前を呼び忘れる寸前で、

私は我に返った。

努めて平静を装った。

装えるわけなんでなかったけど。

それでも、何とか最後まで全員の名前を呼び切った。

そのあとは、ずっと泣いていた。

次から次から涙が溢れて仕方なかった。

涙を止めるつもりもなかったし、

そもそも止め方もわからなかった。

 

式が終わって教室に帰って、

みんなとの最後の時間。

ちゃんと話せないと思って、

思いの全てを学級通信にしたためた。

 

それを配って、

読んだ。

 

ちゃんと読めなかった。

涙は一向に止まってくれない。

大げさではなく、

子どもたちもみんな泣いていた。

 

でも雨が上がって、虹が出るように、

泣き疲れたのか、

最後には、みんな笑顔だった。

写真を撮りまくって、握手を交わして、

長くて短い卒業式は終わった。

 

今でも忘れられない。

忘れられるわけがない。

 

たくさんのことを教えてもらった。

 

この仕事の尊さを。

人の素晴らしさを。

可能性の果てしなさを。

成長の喜びを。

繋がりの強さを。

言葉の力を。

勇気を持つことの大切さを。

信じることで拓ける未来を。

 

毎年思う。

桜の季節に君を想う。

君たちを想う。

 

 

また、春が来る。