小学校教員にょんの日々ログ

毎日の出来事や考え、思ったことなどとにかくアウトプット!

9冊目「短篇集 こばなしけんたろう」 75

今年度9冊目の読了はこちら。

f:id:yamanyo:20190318233946j:plain

「短篇集 こばなしけんたろう」/小林賢太郎

もうずいぶん前になるが、小林賢太郎にハマった。

そりゃあもう、どっぷりと。

 

きっかけは、以前勤めていた職場の先輩だった。

先輩は、ラーメンズが大好きだった。

ある日の飲み会でお笑いについて話をしていた時、

ラーメンズ知ってる?」

と、話を振られた。

 

全く知らなかった。

いや、名前だけなら、なんとなく聞いたような気もしたが、

そこから芋づる式に引き出される記憶は皆無だった。

 

先輩は、私にラーメンズのDVDを貸してくれた。

5本ぐらい。

家に帰って、早速見た。

ハマった。

ウケた。

今まで触れてきた笑いとは種類が違う感じがしたが、

それがすごく新鮮で面白かった。

 

そこから私の小林賢太郎熱はヒートアップしていく。

当時、(というか今も?)ラーメンズでの活動がなかったこともあったと思う。

コンスタントにソロ公演を続けていた小林賢太郎

その舞台を見に行きたいという気持ちが日に日に膨らんで、

見に行くことにした。

小林賢太郎の「ポツネン」。

これが、さらに私をハマらせた。

面白かった。

爆笑というのとは違う。

でも、面白さにもいろいろな種類があるんだと実感した。

 

それから、小林賢太郎の「ポツネン」を、

新作が上演されるたびに見に行った。

そして、数年前から、コント集団「KAJALLA」を結成して、

公演を行っているので、

それを欠かさず見に行っている。

 

話が逸れたが、

今回読了したこの本「短篇集 こばなしけんたろう」は、

そんな、これまでの小林賢太郎のソロワーク「ポツネン」や

コント集団「KAJALLA」で扱ったネタを中心とした

総集編といった本であった。

 

これまでに公演で見たことのあるネタが多数あったが、

文字で読んでみて改めて思う。

 

「言葉へのこだわりがすごい。というか異常。」

 

どうしたら、ここまで言葉と言葉をうまくつないだり、

言葉の持つ多義性を生かしたり、

先入観を与えて裏切ったり、

できるんだろうか。

 

本当に尊敬する。

面白いのは言わずもがなだが、尊敬する。

 

仕事は違えど、同じ言葉を大切にするべき仕事。

果たして、ここまで言葉にこだわって仕事をできているのか。

小林賢太郎とその作品に触れると、

自分の言葉に対する認識がまだまだ稚拙で浅く狭くあることを思い知らされる。

と同時に、言葉の持つ可能性や、面白さをこれでもかというほど見せられる。

そして、魅せられる。

 

この本にしてもそうだ。

一見、教育とは無縁のように思えるが、

すごく取り入れてみたいエッセンスがあちこちにちらばっている。

 

実際、これまでに、アナグラムや言葉ポーカーなどは、

クラスにも取り入れ、子どもたちにも評判が良かった。

 

純粋に楽しめるのはもちろん、

私の仕事上、学級経営や授業にも生かせることがたくさんあり、

まさに宝の山のような一冊である。

今後も、行き詰った時には、

息抜きとブレイクスルーのために再読したい一冊である。

卒業式での出来事。 74

今日は、言語化したいことがたくさんある。

日によってこのばらつき、何とかならんもんか。

これが、毎日、均等にきてくれれば、

すごく精神的にも肉体的にも時間的にも健全やねんけど。

いや、でも、書けるときには書こう。

細かいことは考えず、

せっせとアウトプット。

 

今日は勤務校の卒業式だ。

朝7時に学校に着く。

いつもの癖、朝型人間。

朝のうちに自分の仕事を済ませ、

徐々に職員が出勤してくる。

全員揃って、朝の打ち合わせ。

それが終わると、式までの間、

各自、自分の役割の最終確認をして過ごす。

しかし、確認が終わると、式本番までは手持無沙汰。

そんな先生たちが、自然と職員室に集まった。

その時、後輩の先生に言われて初めて気付いた。

 

「にょん先生、子どもたちの指導がない卒業式久しぶりなんじゃないですか。」

 

ほんまや。

去年までは実に5年間、高学年ばかり担任していたので、

毎年、受け持っている子どもたちが式に出席していた。

卒業生か、在校生代表として。

だから、久しぶりに、本当に久しぶりに、

受け持つ子どもたちがいない卒業式を過ごした。

 

やっぱり子どもたちがいないと、心持ちが全然違う。

緊張が少ない。

基本的には自分の仕事を確実にこなすことに尽きる。

プラス手の足りていないところに、全体を見てサポートに行く意識。

式中の予想外の事態に臨機応変に動くフットワーク。

その辺を意識して過ごした。

 

式は滞りなく終わった。

卒業生が退場し、式場の片づけを5年生と一緒にし、

後は、保護者や5年生と一緒に花道を作り、

教室から出てきた卒業生を送り出すのみ。

今日の日の空は、雲一つない晴れ。

子どもたちの門出を大いに祝福してくれているように思えた。

 

もう少しで教室から卒業生が出てくると、

連絡係の先生からの情報があり、

外に出て、花道を作った。

私は、5年生が作る花道から二歩ほど下がったところに陣取った。

保護者も、卒業生を待ち構える5年生も、先生たちも

みんな笑顔だ。

あたりには、桜は間に合わなかったが、梅の花が満開に咲き、

今日の日に文字通り花を添えていた。

 

 

…と、そんな私のもとへ、すーっと近づいてくる子が一人。

5年生の女の子だ。

知っている子だった。

お姉ちゃんの担任をした、2年間。

少しの間だったが、その妹ちゃんと話した。

 

妹「先生、ここの学校何年目?」

私「この3月で7年目が終わるよ。4月から8年目に突入やわ。」

妹「え、じゃあもう異動とかすんの?」

私「それはわからへんよ 笑。どうやろなあ。」

妹「……。」

妹「お姉ちゃんが、にょん先生が一番良かったって言うてた。」

私「あ、そうなん?」

妹「うん、小学校の時、一番楽しかったって。」

私「そっかあ。それはありがたいことやなあ。うん、素直にうれしい。」

 

そこで、卒業生が下りてきて、会話は終わった。

お姉ちゃんは、家で学校のことをどんな風に話してたんだろう。

姉妹揃って、そんなににぎやかな方ではない。

どっちかっていうと、寡黙な、でも、素直で優しく、利発な子たちだ。

 

この仕事、というかこの仕事に限らず、一期一会だ。

声をかけてくれた女の子たちの学年の担任をすることになったら、

どんな学年を、どんなクラスを作っていくんだろうな、

そんなことをふと考えた卒業式の日だった。

 

バームクーヘン。 73

数日前、以前家の職場で働いていた講師のポニー君(仮名)が、

卒業式の祝電と差し入れを持ってきてくれた。

何とも律儀な彼らしい。

 

彼が差し入れとして持ってきてくれたのは、

バームクーヘンだった。

ホールのやつだ。

ドーナツの巨大版みたいなの。

 

こうした差し入れは、毎年、親睦会担当がみんなに配る。

今年の親睦会担当は二人いて、その内の1人は、キリン(仮名)だった。

 

※キリンに関しては、以下の記事にも登場。よければどうぞ。

 

yamanyo.hatenablog.jp

 

キリンはぼやいていた。

 

「普通、差し入れって個装されたやつ持って来るやろ~!バームクーヘンて!ホールて!」

 

ここで誤解のないよう、断っておくが、

キリンとポニー、そして、私は、お互いをいじれるぐらい仲良しだ。

そんな関係性ありきの発言であり、キリンが根性悪いのではない。

 

確かに、自分が親睦会担当で、ホールのバームクーヘンがやってきたら、

そりゃあ、個装のフィナンシェなんかよりはテンション下がるやろうけど。

でも、相手はポニー君、気心知れた仲である。

ゆえに、私とキリンのおふざけトークは加速する。

 

キ「メール送ったろかな 笑」

私「送るなら『差し入れありがとう。バームクーヘン切れてなかったよ。』って送ろ。」

キ「ハハハハハハ(笑)」

私「んで、追加で、『いや、別にバームクーヘンが切れてなかったからってキレてるわけじゃないから。』って送ろう!」

キ「それええなあ(笑)」

 

 

 

 

僕たちは悪い先輩です。

梅干しの中の中。 72

昼ごはんの弁当に梅干しが入っていた。

本格的なやつじゃなくて、カリカリ梅の親戚みたいなやつ。

弁当屋さんの白ご飯の真ん中に鎮座してる風のやつ。

かなり小ぶりだった。

直径1㎝ってところだ。

種も一緒に噛んでしまわないように、

慎重に前歯でネズミのよう

…いや、ハムスターのように(かわいい方に言い換えるな)かじった。

 

カリッ。

カリッ。

ガリッ。

 

あ、やってしまった。

あんなけ細心の注意を払ってたはずやのに。(どこが)

 

口をもごもごさせ、梅干しの種だけ口から出す。

すると、口の中にナッツのようなものを見つけた。

 

 

あ、天神さんや。

 

 

そういえば久しくお目にかかっていなかった。

梅干しを食べる機会はあったが、天神さんにまで気が回っていなかった。

 

 

みなさんは、天神さんをご存じだろうか。

梅干しの種のかたい殻を割ると

中から出てくるナッツのような物体だ。

このナッツのようなものを「天神さん」という。

 

「という」と言っても、私もそんな呼び名があることを知ったのは、

大学生のころだった。

当時入っていたサークルの後輩と、ご飯を食べに行った時のことだ。

何を頼んだか記憶は定かではないが、

とにかく頼んだメニューの中に、梅干しがあった。

黙々と各自頼んだ食事を済ませて一服していると、

隣の後輩が、私の皿にちんまりと転がっている梅干しの種を見て言った。

 

「え、にょんさん、天神さん食べないんすか?」

 

何それ。

こわいこわい。

何でいきなり神様の名前なんか持ち出しちゃってんの。

君ってそういうあれやったん。(そういうあれて)

私は、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をした。

それを見て後輩はうろたえた。

 

「え、にょんさん、天神さん知らないんすか?」

 

うろたえる後輩を見て、うろたえた。

いやいや、何言ってんの。

知らないんすかも何も、話が全く見えへんねんけど。

 

「何、その、天神さん言うやつは。」

 

気を取り直して聞くと、

「梅干しの種割ったら、中にナッツみたいなの入ってるでしょ。それです。」

 

いやいや、「でしょ。」って、その言い方。

さも、「梅干しの種って割って中身取り出しますよね?普通。」

みたいな感覚。

自分の常識は、相手の非常識やってことをよく覚えておけぇい!

俺は大阪出身や!そんなもん知らん。

いまだかつて聞いたことすらないわ!

後輩よ、お前、地元はどこな!?

 

あ、大阪?

わお、同郷。

 

こんな身近でカルチャーショック。

 

そんなわけで、後輩の話を聞いて、

天神さんの存在を知った私だった。

 

それからというもの、「天神さん」という響きがやけに気に入ってしまって、

会う友だち会う友だち、飯食いに行って梅干しが出てくると、

「天神さん食べへんの?」と聞きまくった時期があった。

食べないのかが気になるのでは全くなく、

ただただ「天神さん」というパワーワードを言いたいだけ。

そんなお年頃。

 

 

あれから、13年。

久しぶりに、天神さんのことを思い出した今日の昼ごはん。

すると、今まで抑えられていたのか、

私の中の「天神さんて言いたい病」が発症した。

 

周りの同僚の先生に聞きまくってしまった。

 

「え、先生、天神さん食べないんですか?」と。

 

みんな訝しげな顔をして、

「天神さん」の存在を知る先生は一人もいなかった。

ひょっとして、そんなメジャーではないの?

 

家に帰ってきた私は、ネットで「天神さん」と検索ワードを入れ、

調べてみた。

 

出た。

 

昔、菅原道真(天神様)が梅干しが好きだったという話があり、

そこから転じて、当時の庶民の間で

梅干しの種もありがたや~ということで、

梅干しの種の中にあるナッツ風のやつのことを、

いつしか「天神さん」と呼ぶようになったのだとか。

 

まさか、菅原道真なんて大物が裏で糸を引いていたなんて。(糸は引いてない)

 

そして、この天神さん、漬けた梅(つまり梅干し)のものだと、

ものすごく栄養価が高いのだそう。

どんな栄養かは割愛するが、

とにかく、みなさん。

 

だまされたと思って、一度食べてみてください。

 

 

 

 

 

言うほどおいしいわけでもないですから。

(おいしないんかーい!)

8冊目「予言の島」 71

今年度8冊目の読了は、ホラーと見せかけたミステリ、

に見せかけたホラー「予言の島」。

 

f:id:yamanyo:20190317225232j:plain

「予言の島」/澤村伊智

 

実は、この本昨日買ったんですよね。

一気読みでした。

もともと、澤村伊智さんの小説が大好きで、

新刊出るたびに、即買いしてました。

今回もそうです。

「あ!新刊出てる!」

気付けば、レジでお会計を済ませていました。

 

第22回日本ホラー小説大賞を受賞した

「ぼぎわんが、来る」が澤村伊智作品との出会いでした。

少し前、「来る」というタイトルで、

映画化もされていたので、

ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 

とにかく、怖い。恐い。

読んでいると、自分の周りの空気にも

その恐怖が広がって、

自分が本を読んでいるその空間自体が、

小説の中の世界と同じ温度、質感になるような。

だから、本を読んでる自分の背後が気になるし、

ドアのすりガラスの向こうを何か横切ったような気がするし、

トイレに一人で行けないし、

 

でも、ページをめくる手を止められない。

そんな感じです。

あの辛いけど、ついスープまで飲んでしまう、みたいな感じです。

 

で、今回もそんな読み味を期待して、早速読みました。

あらすじは、ある有名な霊能力者が遺した予言がきっかけで

ある島で悲劇が起こるという話です。(ざっくりすぎてすいません)

 

序盤から早速漂う不穏な空気感に、ずぶずぶハマっていきました。

怨霊の正体は何なのか、予言の内容と合わせて、

気になってぐんぐん読み進めていきました。

 

次第に明らかになっていく謎。

 

でも…

私の心は段々冷めるというか、醒めていきました。

いや、読み物として文句なしに面白いし、

いいんですけど、

これってホラーなの?

っていう思いが読み進めるほどに、大きくなっていきました。

それは謎が解き明かされる場面で決定的になりました。

 

んー、今回は今までのような展開ではなかったのか。

いや、同じような恐怖を期待しすぎただけやなあ。

 

なんて、少し残念に思いつつも、

最後まで読み進めました。

 

すると、あるページで、

今まで読み進めて、構築してきたはずの物語世界が

足元から崩れ落ちました。

 

え?

ちょっと待ってください。

どういうことですか?

え…えええええええ!!!!???

 

頭の中が整理できないまま、一回目読了。

と、同時に二回目スタート。

 

答え合わせをするように、細部まで読み返してしまいました。

例えるなら、「シックスセンス」や「カメラを止めるな」のような、

そんなお話かもしれません。

 

完全にしてやられた感満載です。

小説家ってすごいや。

 

ますます澤村伊智のことが好きになりました。

一気読み必至です。

 

桜の季節に君を想う。 70

今週、来週と勤務校を始め、近隣の小中学校で卒業式が行われる。

この季節になると、思い出す卒業式の思い出がある。

 

今から3年前。

当時私は6年生の担任をしていた。

縁あって、3年・5年・6年と、3年間担任をした子たちだった。

 

本当に人が好きな子たちだった。

いい意味で世話好き、悪い意味でおせっかい。

でも人とのコミュニケーションを厭わない子たちだった。

色々あったが、本当に楽しい3年間で、随分教師として、色々な経験を積ませてもらった。

 

卒業式練習。

呼びかけの声が、聞く者を圧倒する。

歌声の力に呑み込まれる。

一人一人、本当に小学校生活最後を悔いのない形で終わりたいという気持ちを持って、全力で取り組んでくれた。

だから、涙が次から次から溢れそうになる。

でも、私は運動会の組み立て体操ですでに泣いてしまった前科者 笑

だから、今度こそ、

「泣くもんか!涙は式当日に取っておく!」

と並々ならぬ覚悟で、

毎回少しでも気を抜くと、

決壊しそうになる涙腺と格闘していた。

 

クラスに1人の男子がいた。

縁あって、3年間の全てを担任した内の1人だ。

彼は、やんちゃで、よく指導した。

けんかもした。

すぐに手を出してしまう。

人との距離の取り方が上手くない。

勉強が苦手で嫌い。

でも、その100倍くらい良いところのある子だ。

 

卒業式では、1人1人名前を呼ばれた後、決意の言葉を言って、証書を受け取る。

彼は、「中学校に行ったら、勉強と部活を頑張りたいです。」という決意の言葉を言っていた。

少し恥ずかしそうに、体をゆらゆらさせながら。

担任をした3年間で随分背も伸びた。

決意の言葉を言っている彼を見ている時の気持ちというのは、なかなか一言で表せるようなものではない。

さまざまな形容し難い感情がないまぜになって押し寄せる。

他の子たちにしても、同じだ。

そんな練習を重ね、式当日を迎えた。

 

滞りなく式は進んだ。

そして、卒業証書授与。

一人一人しっかり顔を見て名前を呼ぶ。

みんな立派に決意の言葉を述べて、

証書を受け取っていった。

そして、彼の番になった。

名前を呼ぶ。

「はい。」と返事をする。

台に上がって立つ。

そして、決意の言葉を述べ始めた。

 

 

 

 

「僕の将来の夢は、にょん先生みたいな優しくて面白い小学校の先生になることです。」

 

 

 

 

在校生や職員、卒業生中心に会場がざわついた。

そりゃそうや。

そんなこと、練習で一言も言わんかったから。

そんなこと、練習で一言も言わんかったやんけ。

なんやねん、それ。

式後に聞いた話だが、お母さん以外には、本番でこう言うことは、伏せていたらしい。

誰も彼の式当日のこの企みを知る者はいなかったのだ。

あんな大勢の前で、緊張感もすごいだろうに、

そこで本番だけ言う言葉。

練習なんてしていない。

ぶっつけ本番。

どれだけの勇気だったんだろう。

どれだけの覚悟だったんだろう。

 

彼の言葉を聞いて、頭が真っ白になった。

本当に、会場内の一切の音が聞こえなくなり、

自分の心臓の音だけが聞こえた。

 

でも、それはほんの一瞬。

だったと思う。

わからない。

永遠にも感じられる一瞬だった。

 

危うく次の子の名前を呼び忘れる寸前で、

私は我に返った。

努めて平静を装った。

装えるわけなんでなかったけど。

それでも、何とか最後まで全員の名前を呼び切った。

そのあとは、ずっと泣いていた。

次から次から涙が溢れて仕方なかった。

涙を止めるつもりもなかったし、

そもそも止め方もわからなかった。

 

式が終わって教室に帰って、

みんなとの最後の時間。

ちゃんと話せないと思って、

思いの全てを学級通信にしたためた。

 

それを配って、

読んだ。

 

ちゃんと読めなかった。

涙は一向に止まってくれない。

大げさではなく、

子どもたちもみんな泣いていた。

 

でも雨が上がって、虹が出るように、

泣き疲れたのか、

最後には、みんな笑顔だった。

写真を撮りまくって、握手を交わして、

長くて短い卒業式は終わった。

 

今でも忘れられない。

忘れられるわけがない。

 

たくさんのことを教えてもらった。

 

この仕事の尊さを。

人の素晴らしさを。

可能性の果てしなさを。

成長の喜びを。

繋がりの強さを。

言葉の力を。

勇気を持つことの大切さを。

信じることで拓ける未来を。

 

毎年思う。

桜の季節に君を想う。

君たちを想う。

 

 

また、春が来る。

 

 

そういうとこやぞ。 69

クラスで超がつくほどのド天然男子、アルパカくん(仮名)。

ちょっと人の話を聞くのが苦手。

でも、めちゃくちゃユーモアがあって、面白くって、愛されキャラ。

 

昨日の給食前のこと。

ふとアルパカくんの机を見ると、

ナフキンが敷かれていない。

 

彼は、ほぼ毎日、ナフキンを敷かずに給食を食べようとする。

そして、私は彼に告げる。

 

「アルパカくん、ナフキン敷いて食べやー。」

 

「ああ!しまった!忘れてたぁぁ!…ひひひ。」

 

全く「しまった!」感がない。

 

この日も彼に声をかけた。

 

いつものやりとり。

変わらないやりとり。

 

…のはずだった。

しかし、そこにいたのはいつものアルパカくんではなかった。

 

「アルパカくん、ナフキン敷いてから食べやー。」

 

すると、彼からは予想外の返事が返ってきた。

 

「うわあ、先生、今オレ敷くつもりやったのに…先に言わんといてやぁ!」

 

何…?!

アルパカくん、君がナフキンを敷こうとしていただと…!?

そんな風には見えなかったけど…

あかんあかん!

担任がそんなんでどうする!!

アルパカくんは今開花の時を迎えつつあるのかもしらん。

ならば、黙って暖かく見守るべきではないか。

ついつい、いつものように声をかけてしまい、

彼の変化の兆しに気付かなかった自分を少し恥ずかしく思った。

思い込みや先入観は、いつだって目を曇らせる。

 

それ以上、声をかけるのをやめ、

そっと見守ることにした。

 

「手を合わせてください。いただきます。」

 

日直さんのあいさつを合図に、一斉にお腹を満たそうと、給食にがっつく子どもたち。

 

私もそんな子どもたちにつられるようにして、給食を食べ始める。

にぎやかで楽しい時間。

顔を上げると、アルパカくんも向かいの席の友だちと話しながら、

楽しそうに食べていた。

 

そんな様子に心がほっこりし、

再び視線を自分の器に戻そうとした。

 

私の目は、自分の器ではなく、

アルパカくんの机に吸い込まれた。

 

 

 

ナフキン敷いてないやないかいっ!!

 

 

気づいたらそうツッコんでいた私の心には、いつのまにか見守る気持ちのカケラも残っていなかった。