サイズ感 23
職場では、今各クラスでフェスティバルに向けて店作りが進んでいる。
フェスティバルとは、児童会が主催する行事で、
簡単に言えば、文化祭的なイベントである。
3~6年生が、各クラスで店を作り、店番をしたり、
お客さんになって、他の店に遊びに行ったり。
そんな感じの割とみんな楽しみにしてる行事である。
うちのクラスでも、もちろん店づくりを進めている。
綿密に計画を立てていたので、
先日、具体的な店の仕掛けづくりにようやく入ったところだ。
店づくりの材料は、基本的に自分たちで集めてくる。
布、発泡スチロール、ひも、木材…
そして、段ボール。
ある日の放課後、クラスのAくんが相談にやってきた。
A「先生、家から段ボール持ってきたいんですけど…」
私「うん、いいよ。持っておいで。」
A「うん、でも、その段ボールがすごく大きくて…。どうやって持ってきたら、いいのか。」
私「そんな大きいの?」
A「うん。」
私「放課後にさ、友だち誘って一緒に運んでくるのは?」
A「うーん、たぶん無理だと思う。」
私「(これは相当でかいな。)そっかー。
…じゃあ、朝、家に取りにいったげよか?」
A「うん!先生ありがとう!」
約束をして、A君はほっとした顔で家に帰った。
Aくんを帰した後、お母さんに電話を入れた。
私「あ、こんにちは。担任のにょんです。」
A母「あ、先生。いつもお世話になってます。」
私「こちらこそ。今日ね、さっきAくんにフェスティバルで使う段ボールを学校に持っていきたいけど、大きすぎて、どうやって持っていけばいいか…って相談受けまして。」
A母「はい。あ、本人言ってました。」
私「で、明日の朝にでも、おうちにお伺いして、その段ボールだけ運ばせてもらおうかなって思ってるんです。」
A母「ええ!?そうなんですか?わざわざすいません。」
私「いえ。でもかなり大きいみたいですね?」
A母「そうですね。Aくんだとちょっと持っていくのは無理かなあ。先生なら何とか持って行けるとは思います。」
私「そうなんですね。わかりました。そしたら、明日の朝、お伺いさせてもらいます。」
A母「すいません、ありがとうございます。」
翌朝、Aくんの家に向かった。
少し待っていると、Aくんが出てきた。
私「おはよう。」
A「おはよう。あっ、段ボール!」
私の顔を見て思い出したように、家の中に戻っていく。
閉まりかけたドアの隙間からA君の声が聞こえてくる。
A「お母さん、先生来てくれたよ!ねえ、段ボール!」
私は頭の中で、段ボールを想像した。
きっとこれぐらいなんじゃないだろうか。
だから、原付で来ず、徒歩にした。
朝からいい運動だ。
少しすると、ガサガサと音がして、お母さんが現れた。
右手には、赤ちゃんを抱っこしている。
ん?赤ちゃん?段ボールは?
左手を見ると、そこには、例の段ボールがあった。
私は、絶句した。
A母「おはようございます。先生すいません、こんな朝早くから。」
私「…おはようございます。…いえいえ、とんでもない…。」
A母「じゃあ、すいません、よろしくお願いします。」
私「分かりました…。」
半ば呆然としたまま、Aくんより一足先に学校へと、
もと来た道を帰った。
こんな感じで。
サイズ!!
ちょっと大きめのトートバックか!!
小脇に挟めてしまえるやないか!!
朝から、猛烈に心の中でツッコみました。