義父の言葉、ようやく伏線回収。 10
もう一つありました、帰省中の出来事。
今度は、義父である。(今回は、だ・である調で通すのである。)
その日の朝も、前日と同じように、寝ぼけ眼であいさつを交わし、
リビングのテーブルの空いている席へ座った。
義父「にょん君、ちょっと待っちょりんさいね。トースト準備するけん。コーヒーはブラックでよかったかいね?」
私「ああ、ありがとうございます。はい、ブラックで。」
しばらく待っていると、目の前には、焼き立てのトースト、サラダ、ゆでたまご、おせちの残りなどが並んだ。
普段、日常生活において私たち夫婦は、あまり朝食を食べない。
そういう習慣があまりない。
食べたとしても、ヤマザキのランチパック一つとか、それぐらいだ。
だから、目の前に並ぶ種類豊富な朝食にいつも圧倒される。
「これを、一人で…?」
そんな自問自答も毎回のことだ。
そして、もちろん、食べる。きれいに一つ残らず。
おもてなしへの感謝の気持ちは、行動で示すしかない。
時間はたっぷりある。
ゆっくり30分ほどかけて食べきった。
腹を満たす満腹感。胸を満たす達成感。
その時、義父が驚きの行動に出た。
おもむろに私がいただいたのとは違う食パンを引っ張り出してきたのだ。
まさか…。
そう、そのまさかだった。
義父「にょん君、こっちのパンはまた違うけえ。酵母が違うんじゃと。ほれ、食べてみんさい。焼いちゃろう。」
私(お義父さん、ぼくはもうおなかも胸もいっぱいです!なので、これ以上は、勘弁してください!)
なんて言えるわけがない。
ひたすら、「はあ。」と、ふわぁっとした返事で牛歩作戦。
しかし、義父のおもてなしの気持ちはとどまるところを知らない。
その手は、食パンをつかみ、オーブントースターへ。
もはや私になす術はない。
義父の手を見つめる私。
万事休す。
…と、そこでまさかの救いの手が!
妻「ちょっと、お父さんさ、にょんはそんな食べんって!もういっぱい食べてるのに、さらにそんなん食べれるわけないやろ!もう、やめたげて。」
妻ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
神様、仏様、奥様ーーーー!!!
…結論から言うと、義父の手は止まらなかった。
何事もなかったように、こんがり焼かれたトーストは、私の皿へ。
妻「だから、いらんって言ってるやん。そんなん気ぃ使って言われへんのわかるやろ!?」
しかし、妻の健闘むなしく…。
義父「まあ、一口食べてみんさい。話のタネになるから。」
ん?話のタネ?
義父「食べてみんさい。話のタネとして。ね。」
ん?話のタネ?
この食パンを食べることが、どうぼくの話のタネになるというのか。
いくら考えてもわからない。
けれど、そのことについて考えていると、いつの間にかトーストを食べ終わっていた。
とはいえ、話のタネが何なのかわかったわけではない。
…という話を今日、職場でみなさんとランチ中に話した。
すると、先輩ママ先生が言った。
「いや、でもそれ今まさに話のタネになってるんじゃない?」
ほんまや!!!!!
って、話でした。