27冊目「HELLO,DESIGN」 167
ちょっとlearn × creationのまとめはいったんお休みして、
今年度27冊目の読了本はこちら。
「デザイン思考」についての話。
最近「〇〇思考」という言葉が飛び交っているなあと思う。
もちろん、その全部を知っているわけではないし、
知らなければいけないこともない。
どれが良くてどれが悪いってことではなくて、
場や状況に応じて、それぞれに最適なアプローチ方法は違うから、
その都度、選んだり、組み合わせたりしていくことが大切なんだろう。
その時に、いくつかそういう「〇〇思考」という視点を持っていれば、
解決に向けた視野も広がるのだと思う。
完全にシンプルな表紙のデザインに惹かれて購入した。
本書の中でも言われているように、
私自身も、「デザイン」=「見た目の形や色や構成を整える」
というようなニュアンスを無意識に持っていた。
しかし、筆者は「デザイン」の本質を、
「課題の発見とその解決」であると言っている。
なるほど、確かに「キャリアデザイン」や「ライフデザイン」
なんかの言葉は、筆者の言うような本質に近い気がする。
このデザインの本質にひっかかりを感じた。
「課題の発見とその解決」というのは、
PBLや探求学習と親和性があるのではないかということだ。
そこから、教育とデザイン思考がどう結びつくか、
そのことを考えながら読み進めた。
<デザイン思考のマインドセット>
4つのポイントでまとめられていた。
①曖昧な状況でも楽観的でいられること
②旅行者/初心者の気分でいること
③常に助け合える状態を作ること
④クリエイティブな行動を信じること
この4つのどれもが、これからの教育とも相性がいい。
①ポジティブに
②当たり前を疑う、そもそも~
③協働的な学び
④それぞれの興味・関心・好きを深堀り
<デザイン思考のプロセス>
こちらも4つのポイントでまとめられていた。
①デザインリサーチ(観察/インタビュー)
②シンセシス/問いの設定
③ブレスト&コンセプトづくり
④プロトタイピング&ストーリーテリング
身の回りや自分たちの日常生活を多角的・多面的に観察し、
そこから自分たちで核となる「問い」を設定し、
計画を立て、モデル学習をして、
修正をしながら、問いの解決へ向かって、
協働しながら進んでいく。
デザイン思考と探求学習やPBLは、
やはり親和性が高いように思う。
そして、4つのプロセスの中で一番衝撃を受けたのが、
④プロトタイピングだ。
これは、試作品を作って、
アイデアを手に取れるものにして確認する段階。
何が衝撃かって、
早い時には、1分ぐらいでプロトタイプを作ってしまうってところ。
試作品って言われても、ついついていねいに
作りこんでしまいがちな私には、衝撃だったのだ。
クラスの子どもたちを見ていても、
報告文の下書きや、ポスターの下書きなんかに、
異常に時間をかけて、作りこんでいたりすることが、
よくある。
でも、ここでも「目的」から意識がそれてはいけないんだなと
改めて痛感した。
「ていねいにクオリティを高く仕上げる」ことは、
果たして「目的」なのか?
否。
完成形へのイメージ共有をすることで、
実際のゴールへ向けて修正をしていくのが「目的」だ。
この段階がない状態で、ゴールへと進んだとしたら、
途中でミスをしたときのリスクの高さはけた違いだろう。
だから、逆に言えば、
このプロトタイピングで、どんどんトライ&エラーをくり返す。
作るたびに、みんなで意見を出し合って、対話を重ね、
様々な角度からの検討を重ねていくのだ。
そうすることで、アイデアは,研ぎ澄まされていく。
このプロセスは、learn × creationで体験した
PBLワークショップと共通している。
見た目や仕上がり具合なんて極論どうだっていい。
それよりも圧倒的なスピードでアウトプットを繰り返し、
修正を重ねていく。
このスピード感は、ある意味、
今の日本の教育にすごく足りていないものなのではないだろうか。
スピード感のあるプロセスでないと、
どうにもならないことって結構ある。
あと、もう一つ。
デザイン思考の考え方では、
自分自身の「直感」というものを大切にする。
これだけ科学技術が進歩した現在では、
他と比べても、アイデア自体にそこまで差が出ない。
必要な情報を得ることが昔に比べ、
格段にそのハードルが下がっているからだ。
だから、そこから一つ頭抜け出すには、
十人十色である自分の「主観」が武器になる、というわけである。
だから、普段から自分が感じたことを
意識的に顕在化させるクセをつけていく。
身の回りの「当たり前」を「なぜ?」と掘り下げる。
そうすることで、隠れたニーズを可視化できるようになる。
このアプローチ方法は、「メモの魔力」の前田裕二ととても似ている。
「事実」→「抽象化」→「転用」のプロセスだ。
以前に「メモの魔力」を読んで、感銘を受け、
メモを取り始めた私にとっては、
嬉しい符号だった。
とはいえ、
このデザイン思考の良さを、
教育の現場にどう落とし込んでいけるのか。
また、楽しみな材料が一つ増えた。