37冊目「直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN」 235
今年度37冊目の読了はこちら。
最近、「〇〇思考」という言葉をあちこちで聞く。
自分自身、数か月前に「デザイン思考」についての本を読んだ。
他にもいろいろある「〇〇思考」の特徴が序盤でまとめられていて、わかりやすかった。
さてさて、本書を読んでみて考えたことをいつものようにつらつら書いていこうと思う。
まず、「はじめに」に書かれてあった言葉に、ドキッとさせられた。
「他人モードにハイジャックされた脳」
日々過ごしている中で、この言葉には、思い当たることがいくつもある。
情報にあふれる現代社会を生きていると、「他人モード」で過ごしてる時間の方が多い、と著者は言う。
確かに、仮に一日24時間の中でやったことを全て書き出したとして、その中に、「自分モード」で考えて過ごしている時間って一体どれぐらいあるだろう。
ひょっとして、1時間もないんじゃないか…って思う日もあって、ぞっとする。
VUCA化の進むこれからの時代、妄想を駆動力にした「ビジョン思考」が大きな力を発揮するというのが、本書の主張。
ビジョン思考とはどんなものか?
ビジョン思考はどのように身に付けるのか?
なぜ今ビジョン思考なのか?
そんな問いに答えるように本書は進んでいく。
読んでいて、これまでに読んだ様々な本や経験の断片とつながるところが多々あって、まだまだ整理しきれていないけれど、「全てはつながっている」と感じた。
VAKモデル(Visual/Auditory/Kinesthetic)は、優位感覚と似たような概念で、イエナプラン教育の講座で学んだマルチプルインテリジェンスなんかともリンクする部分があるなあと感じた。
人によって優位感覚は違うから、当然、学習における効果的な学び方も人によって違う。
だから子どもたちのより詳細な見取りが必要だし、一斉指導型だと全ての子どもたちが理解しやすいという状況を生み出しにくいことになる。
人は、「自分モード」で考えている時、「妄想→知覚→組替→表現」のサイクルをたどるらしい。「表現」は次の「妄想」へとつながり、ぐるぐると循環し、スパイラルに上昇していく。
このサイクルって、探求学習とか、PBLのプロセスとも似てるのかなあ。
このサイクルを子どもたち自身が授業の中で回していけるようになれば、すごくおもしろそうだなあと思った。
サイクルがうまく回らないときには、それぞれのプロセスにおいて、原因がある。
・妄想→内発的動機が足りない
・知覚→インプットの幅が狭い
・組替→独自性が足りない
・表現→アウトプットが足りない
こうした原因も、けテぶれみたいに子どもたち自身が何が原因かに自覚的になれたら、自分で学習を調整していけるようになりそうだ。
ビジョンドリブンは、このサイクルの中で、次々に新しい「問い」が生まれる構造になっている。だから、サイクルに終わりがなくて、どんどん新しいことに進んでいける。
一方、よく聞くイシュードリブンは、ゴールが「問い」の解決だから、解決すると、サイクルが終わってしまい、モチベーションが続かないことになる可能性がある。
これって、授業でも当てはまることよなあってすごく感じた。
内発的動機付けをいかにするかということがやはりすごく大きなポイントになってきそうだ。
そういう意味では、今年度クラスで取り組んだ教室リフォームの中で、巨大なソファを作たことは、明らかにビジョンドリブンだった。
そして、この教室リフォームでは、「とにかく作ってみる」ということをずっと大切にしてきた。
いきなり、完ぺきなものなんてできない。
作ってみて、そこから考えて、壊したり追加したりして、「妄想→知覚→組替→表現」のサイクルをどんどん回していった。
「とにかく作ってみる」は、プロトタイピングにあたる。
作ってみることで生まれたプロトタイプが場に対話を生む。
「Build to Think(考えるために作る)」って大事だ。
あと、ビジョン思考を鍛えるためのいくつかのワークを見ていて、前田裕二の「メモの魔力」の最後に付録でついていた「自分に関する1000の質問」のことを思い出した。
そういえば、「1000問全部やる!」と意気込んで、すっかり50問目ぐらいでほったらかしてた。
あれを、改めてやってみようかなって気になった。
なにより、全ての質問が「自分」に関すること。
「自分モード」で思考するのには、うってつけだ。
他にも、面白そうなワークがいろいろ紹介されていたので、ちょっと時間を作ってやってみようと思う。
ビジョン思考においては、具体化(プロトタイピング)とフィードバックの反復が重要だそうだ。
このビジョン思考に関して、かなり「なるほどなあ!」と納得しながら読み進めてきたのだけれど、自分の授業をふり返ってみたら、結構がちがちに計画を立ててやっていることが多い。
まあ、当然っちゃあ当然。
教科書があり、カリキュラムがあり、いついつまでに何を学習するってことがある程度決められている。
でも、その中で、1割でも2割でも、ビジョン思考をベースに、具体化とフィードバックのサイクルの回転数を上げて学べる環境のデザインや実践をやっていけば、少しずつ変わっていくものもあるんじゃないかと感じる。
プロトタイピングの「いかに早く失敗するか」の視点は、授業でも学級経営でもすごく大切だと思う。
プロトタイピングによって、チャレンジのハードルが下がり、「完ぺきなんて目指さず、まずやってみる」中で思考の制限が外され、創造的なアイデアが生まれる可能性が高まる。
「作家の時間」なんかは、これに近いのかなあと感じる。
そういうことを、部分的にでも取り入れていけないかの模索をしていきたい。
なんか全然うまく言語化できなくてもやもやするけれど、このもやもや自体、「世界を複雑なまま知覚する」というビジョン思考の方向性と一致しているんじゃないだろうか。(いや、理解力の低さを棚に上げるな。)
まあ、とにもかくにも、授業に生かせそうなエッセンスが色々と発見できたので、とても良かった。