Don't speak English. 184
2学期が始まって1週間が経った。
先週までの午前中授業による試運転期間も終わり、今日からがっつり6時間授業だ。
運動会の練習も始まっているので、給食の時間は、数少ないホッと一息付ける時間になっている。
給食時間は、毎日順番に子どもたちのグループを回り、そこに机を持って行ってくっつけ、一緒に食べている。
毎日、それぞれのグループで違う話題で盛り上がり、それに参加するのはとても楽しい時間だ。
今日は、「絶対に英語をしゃべってはいけない」という縛りで会話をした。
縛りが付いた途端、急に口数の減る子どもたち。
まるで、借りてきた猫。
初めての彼女の家に緊張する彼氏。
楽しもうとして設定した縛りが、このままでは、真逆の沈黙を作り出してしまう、と思い、どんどん仕掛けた。
私「なあなあ、S君。あのー、機械でさあ、ピコピコやって、冒険したり、敵とか倒したりして遊ぶやつあるやん。あれで、何が最近一番好き?」
S君「…。ん?どういうこと?機械?敵を倒す?…ああ、ゲーム?」
私「はい、残念でしたああああ!『ゲーム』は英語おおおお!!!」
ひどい担任だ。
しかし、ヒールに徹することを決めた私に「容赦」の二文字はない。
私「なあなあ、Mさん家は新聞取ってる?」
Mさん「取ってないで。」
私「え、じゃあ、世の中の出来事とかってどうやって知るの?」
Mさん「え…そりゃあ、ニュース…あ!」
私「『ニュース』!!アウトォォォ!!!ひゃっほう!!」
本当にひどい担任だ。
大人げないとはまさにこのこと。
「大人げない」の体現者!
「大人げない」が服を着てご飯を食べている!!
しかし、悪役に徹することを決めた私に「情け」の二文字はない。
K君「なあなあ、先生。緑色のぶどうってなんていうんやっけ?」
私「え?緑色のぶどう?そりゃあ、『緑色のぶどう』やろ。」
K君「ちゃうってちゃうって、そうじゃなくって!!違う言い方あるやん!」
私「んー、知らんなあ。K君教えてや。」
この後も、私をあの手この手でひっかけ、なんとか英語を言わせようとするグループの子たちに対して、私は一度も攻めの姿勢を崩すことなく、戦いきった。
中でも、一番積極的に私に勝負を挑んできたK君との戦いは熾烈を極めた。
しかし、そんな彼も私の前に無残に散った。
彼の最後の言葉は、「ハワイ」だった。
なお、なぜ彼が「ハワイ」と言ったのか、その文脈がどのようなものであったかは、覚えていない。
明日は、どんなドラマが待っているのか。
小さなワクワクでも、明日は待ち遠しいものだ。