小学校教員にょんの日々ログ

毎日の出来事や考え、思ったことなどとにかくアウトプット!

『みみばしる』 60

今日、舞台『みみばしる』を見てきた。

近鉄アート館、昼の部だ。

 

ある日、TwitterのTLを見ていて、『みみばしる』の情報が

ふと目に飛び込んできた。

作・演出の松居大悟が好きだったし、

音楽監督の石崎ひゅーいも好きだったし、

しばらくぶりに舞台を見に行きたかった。

 

そんなタイミングが自分の中で行きたい衝動を加速させ、

気付けばチケットを購入していた。(そういうの多い)

 

舞台『みみばしる』は、ラジオ局J-WAVE

劇団ゴジゲン主宰の松居大悟がコラボレートして生まれた。

その脚本の構想段階からラジオのリスナーを巻き込んで、

共に作り上げていくという斬新な取り組み。

キャストもリスナーの中からオーディションで選んだそうだ。

 

ストーリーは、こんな感じ。(以下『みみばしる』公式サイトから抜粋)

 

30歳になった途端会社をクビになった妙子(本仮屋ユイカ)は、なんとなく劇団の手伝いを始める。自分は誰にも必要とされていないのではないかと思う日々の中、妹の影響でラジオを聴き始める。音楽と共に、リスナーから送られてくる愚痴や悲しみを全力で励ましてくれるラジオに妙子はのめり込み、メッセージを投稿するようになるのだが…。音楽の生演奏と共に、受信者が発信者に変わる、舞台×ラジオ×音楽の境界線を越えたプロジェクトが今始まる!

 

 見ている間中、また見終わってからも、

その圧倒的なまでの熱量が体を貫いていた。

途中、何度か視界が涙で霞んだ。

その場の熱量は、リアルに同じ空間を共有することで、

濃密に、確実に、伝わってきた。

 

劇中、主人公の妙子が言うセリフにこんなものがある。

(細部は違うかもしれないが、おおよそはこんな感じだと思う)

 

「投稿したメッセージを読まれたことで、私は、何者かになれた気がしていた。」

 

すごくドキッとした。

何者でもない自分に漠然とした不安を感じているのは、私も同じだった。

でも、じゃあ、何者になりたいのかと言われても、わからない。

この先、どう生きていきたいんだろう。

今の職業を続けていきたい。

授業がうまくなりたい。

子どもの心がもっと分かるようになりたい。

もっと子どもの成長を的確にサポートできる教師でありたい。 

 

でも、それ以上「それで?」と問われると、

急に自分の将来がぼやける気がする。

 

妙子は、私だった。

だから、妙子のセリフがこんなにも刺さるんだろう。

私もきっと今焦っているんだ。

時間は待ってはくれない。

周りを見ると、みんな自分より確かな未来への道を

歩んでいるように見える。

 

そんな妙子の背中をラジオはそっと押してくれる。

そして、そんな『みみばしる』は私の背中を押してくれた。

ラジオのリスナーって、受信者であり、発信者だ。

発信の仕方って、人それぞれだ。

アフタートークの中で、松居大悟もそんなことを言っていた。

何かに背中を押されて、少しでも行動を起こす。

それって、もう立派な発信かもしれない。

 

自分を何者としても認めてくれないような世界だけれど、

わずかでも「動いてみよう」と発信を始めると、

何かしらの反応を返してくれるものなのかもしれない。

世界からの反応は、鏡のようなもので、そこには自分が映る。

それは、発信をくり返していけば、輪郭がはっきりしてくる。

すると、「自分が何者か」って問いにも答えが見えてくる日が来るんじゃないか。

そんな風に思えた。

 

人ってあれこれ考えてしまいがちだ。

「こうしたら、こうなるんじゃないか。」

「あの感じで行くと、何か言われるんじゃないか。」

 

でも、動いてみると、案外大丈夫だったりする。

そうなんだ。とにかく動いてみることなんだ。

そんな決意を応援してくれるような舞台だった。

活力をもらえる舞台だった。

 

最後に、キャスト全員で一つの歌を歌うシーンがある。

あの時の歌声が忘れられない。

本当に、大げさでなく、魂を揺さぶられるような歌だった。

これは舞台なのか、現実なのか。

その境目が溶けていくような。

最初にも書いたが、キャストの、作品の熱量が、

あの空間を侵食していた。

22人目のキャストになったような感覚だった。

 

映画「This Is Me」のワークショップセッションのような、

18祭の時の「正解」の合唱のような。

 

それは、理屈を超えた力だ。

音楽の力だ。

音楽ってすごい。

それをこのタイミングでこの形に落とし込む演劇の力ってすごい。

受信と発信両方の側面を持つラジオという素材の持つ力ってすごい。

音楽×舞台×ラジオ。

本当にこの化学反応が数式以上の数値をたたき出していた。

 

「大丈夫。心配ないって。やってみようや。」

そんな温かい手で確かに背中を押された。

 

本当に見て良かった。

 

私は、私だ。