処女作。 249
先日、オンラインのショートショート講座なるものを見つけて参加した。
昨年度の三学期に、作家の時間に取り組んでいたこともあり、「教師がたくさん書かなければいけない」を積み重ねようと思ったのがきっかけだ。
Peatixで偶然見つけて、何だか面白そうだったから気づけば申し込んでいた。
当日、少し緊張して参加したが、始まってみると、講師の方の説明がとてもわかりやすい上に面白くて、ワクワクしながら書いている内にあっという間に2時間が過ぎてしまった。
2時間前には全くのゼロ状態だったぼくの頭の中に、ショートショートが完成していた。
子どもたちとやってみても面白いんじゃないかと思った。
以下が、全く事前に考えることなしに2時間の中で一から完成させたショートショート。
仕上がりはともかくとして、やればできるもんだ。
「消したい過去」
あれは、ぼくが小学校4年生の頃だったと思う。家の近所の小さな文房具屋でおもしろい消しゴムを見つけた。消しゴムに内蔵されたAIが間違いを自動で判断して、同じく内蔵のスピーカーで教えてくれるというものだ。価格は500円と、普通の消しゴムにしては少し高い
と思ったが、勉強が苦手だったこともあり、貯めていた小遣いで買うことを即決した。
家に帰ってから、使ってみると、本当に間違えたところを教えてくれる。教えてくれる音声が予想以上に大きくてビックリしたが、消しゴム側面にあるボタンでなんとか調整できた。その日から、翌週のテストに向けて、ぼくは机に向かって勉強に励んだ。間違えたところがあると消しゴムが教えてくれるので、嘘のようにスルスルと勉強が進んだ。なぜか大阪弁なのも慣れてくると愛着がわいてくるものだ。そんなぼくの姿を見て、母はとても喜んだ。
テスト当日。スラスラと問題が解ける。終了まで10分以上を残して問題を全て解き終えた。そんなことは初めてだった。
残り5分を切ったころ、最後に見直しをしようと、テストを手に取ると、裏側が透けて見えた。
まさか…。慌ててテストを裏返すと、裏面にもびっしりと問題があった。
それまでの余裕は一気になくなり、慌てて裏面の問題にとりかかった。けれど、焦りのせいで思うように問題が解けない。
ああ、間違えた!くそっ!急いで消して書き直す。
…と、その時。「ちゃうちゃう!それ消さんでもそのままでおうてんねん!」
静かな教室に大音量の大阪弁が響き渡る。
ぼくの消したい過去の1つだ。