1冊目「教師の力を最大限引き出すNLP」 244
新しい年度になったので、冊数リセットしました。
今年度1冊目の読了本はこちら。
自分の中では、珍しく中身を長めに試し読みして、購入を決めた一冊。
NLPは、Neuro-Linguistic-Programmingの頭文字を取ったもので、日本語に訳すと、「神経言語プログラミング」。
その成立の経緯については、本書の一部を引用する。
1970年初頭、カリフォルニア大学の心理学部の生徒であり数学者だったリチャード・バンドラーと、言語学の助教だったジョン・グリンダーが心理学と言語学の観点から新しく体系化した人間心理とコミュニケーションに関する学問です。
なぜこの本に惹かれたのかというと、タイトルの「最大限引き出す」に、コーチング的なニュアンスを感じ取ったのが一番の理由のような気がしている。
そこから手に取って中身を読んでみると、具体的な手立てが色々と書かれていて、使えるかもしれないなと思った。
今年度異動したてで、初めて出会う子どもたちとどんな風に信頼関係を築いていこうかあれこれ考えていたことも影響していると思う。
この本を手に取る過程をふり返ってみて、めちゃくちゃ「カラーバス効果」を実感した。
「コーチング」という特定のワードを意識して普段の生活をしているから、そこに関わるものや言葉が自然と目に入ってくる、そんな状態なんだろう。
NLPの効果として、序盤でプロテニス選手アガシの復活劇について書かれていたが、アガシを復活させたコーチは、テニスの専門家ではなかった。
「相手の力を引き出す」というスタンスに立つのであれば、テニスの専門性は必要でなくなる。
答えは相手が「持っている」ことが前提だからだ。
とてもコーチングと相性がいい考え方だ。
NLPには、15の前提がある。
1 相手の世界観を尊重すること。
これって、傾聴そのものだ。
3 行動は適応するための調整であり、そして、行動はその時選択可能な
最もよい選択なのである。
これって、子どもたちや保護者の思いを受け止めるときにすごく大切だ。
自分のものさしで相手を否定していたら、信頼関係は築けない。
6 行動と変化は、コンテクスト(背景・状況・文脈…)とエコロジー(生物と環境の相互関係)という観点から評価されなければいけない。
その場面だけ切り取って判断することって、指導の中でやってしまいがちだけれど、そこでこの前提を思い出したい。
そして、「エコロジー」って、これ認知心理学でいう「アフォーダンス」のことじゃないのか。
子どもたちの行動のきっかけとなる環境という観点は、もっと自分が持つべき視点だと思った。
子どもたちが望ましい行動を自ら選択したくなるような環境デザイン。
教室だけでなく、学校全体の中で、そういう視点で改善できるところを見極め、デザインしていけたらいい。
7 人は、成功するための能力をすべてもっている。(リソース(資源・能
力)をもたない人は存在しない。存在するのはリソースの足りないステ
ート(心の状態)だけ)
これも、「子どもはそもそも有能だ」という自分が大切にしている子ども観とリンクする。
8 クライアントからの抵抗は、ラポール(信頼関係の構築)の不足を示し
ている。
まずは、心理的安全性の確保による、安心・安全な居場所作りを心掛け、承認を積極的に行っていくことが大事だと改めて感じた。
9 あなたに返ってくる返答は、あなたが送り出したコミュニケーション
の真意に対応する。
よく「相手は自分を写す鏡」と言うが、まさにそれだ。
そして、「コミュニケーション」ではなく、「コミュニケーションの真意」に対応することも忘れないでおきたい。
いくら上辺で取り繕ったところで、本当に本心からそう思っていないことは伝わらないし、見透かされるってこと。
だからこそ、教師として「在り方」が試されていると思う。
11 私たちが使う言葉は、それが表象する出来事や物事そのものではな
い。マップはテリトリー(領域)ではない。(ひとつの出来事は個人によ
って捉え方が変わるということ)
人は、その人が見たいようにしか見ない、ってこと。
自分の見方もそうだし、相手の見方もそうだってことを忘れちゃいけない。
だから、そもそもコミュニケーションというのは、不完全でしかありえない。
だから、様々な手立てでその隙間を埋めていくことで、より精度の高いコミュニケーションが可能になり、相互理解につながるということ。
信頼関係を築く基本スキルとして登場した「キャリブレーション」は、そういう言葉があることを知れて良かった。
これは、「相手の心理状態がどうなのかを、言語以外のサインから情報を見分けること」をいう。
つまり、「よく観察し、気付く力」のこと。
これって、これまでの経験でおそらく無意識でくみ取っていた部分が大きい。
それに、全てを意識して気付くというのは、正直難しいと思う。
無意識、いわばオートパイロット状態で処理しているからこそ、受け止められている部分がかなりあると思うから。
でも、「こういうスキルがあって、こういうところから情報が読み取れる」ということを「知っている」と、子どもたちの行動の意味を一つ一つふり返る際の視点になる。
今までよりも、ほんの数%でいいから、「あ、この姿勢はひょっとして…」みたいにひっかかりを意識の上の持ってくることができれば、十分かな。
「直感と論理をつなぐ思考法」でも登場した「VAKモデル」がここでも出てきた。
改めて当てはまる項目にチェックしてみたけど、やっぱり自分はA(聴覚)優位っぽい。
この「VAKモデル」、レッテル貼りにしてしまうことだけには気を付けたい。
「この子は、聴覚優位だから~。」とその子のイメージを固定してしまうと、そのイメージの中でしかその子を見ることができなくなる。
それはつまり、目の前のその子を見ていないということだ。
あくまで、より良いコミュニケーションを取っていこうとするときの一つのとっかかりに過ぎない。
コーチングにおけるソーシャルスタイルと似ているかもしれない。
後の方で出てきた「メタモデル」についても、同じことが言える。
レッテル貼りのためのものではない。
他者視点での気づきを促す「ポジションチェンジ」は、ぜひ子どもたちの指導の中で活用してみたいと思った。
特に、今年度持つ低学年だと、なかなか頭の中だけで、相手のことを想像して考えるのが難しい子もいてると思う。
おもしろい。
人の目の動きでその人の考え方の傾向を読み取る「アイアクセシングキュー」もとても興味深い。
でも、ちょっと眉唾感が自分の中にあって、本当にこの通りになるのかと半信半疑。
まあ、「とにかくやってみよう」の精神で、ちょっと子どもたちを見取る時にやってみよう。
そして、「リフレーミング」。
ここ読んで、頭に「失敗」の文字が浮かんだ。
そうだ。
昨年度、ぼくは、子どもたちの中にある「失敗」の意味を「リフレーミング」しようと奮闘していたんだ。
そんなことに気づいた。
子どもたちにとって「失敗」という言葉の持つネガティブな意味をリフレーミングするのは、今後もとても重要になってくると思う。
このリフレーミングがうまくいくことで、子どもたちは主体的に学び、積極的にトライ&エラーをくり返せるようになるはずだ。
「けテぶれ」の実践の中では、まさに「失敗のリフレーミング」を子どもたちが自らの力で行っているなあと思った。
一冊読み終えて、「ああ、あれのことか。」という共感がたくさんあった。
それは、これまで積み重ねてきた実践知が理論とリンクしたんだろう。
今まで何となく言語化できないまま、感覚的にやっていたことが体系的に整理された感覚がある。
すっきりしたというか。
理論と実践、どちらも欠けちゃいけないってことを実感した一冊だった。
新型コロナウイルス対応で、子どもたちとの出会いはまだしばらくお預けになってしまったけれど、同僚の先生とのコミュニケーションの中とか、できるところからまた実践知を積み重ねて、向上しつつ、子どもたちとの出会いを待ちたい。