3連休②。 192
3連休二日目。
【9月15日】
この日は、いとこの結婚式だった。
私の母方のおばの息子。
今年28歳で、私の8つ下だ。
いとこと会うのは、年に1回か2回なので、改めて年齢を聞くと、8歳も離れていたのかと今更ながらに驚いた。
いとこが小さかった頃は、かわいくてかわいくて、会うとよく一緒に遊んだ。
ちょっと大きめのたまに会う弟のような存在だった。
それから互いに、互いの時間の中で成長し、心も体も大きくなっていく。
いとこは、小学校高学年から中学生、高校生となるにつれ、ゲームにのめりこんでいった。
ように見えた。
少なくとも、私には、そう見えた。
年に1・2回、ばあちゃんちで親戚みんなで集まっても、口数少なく、というか、ほとんど話をせず、関わりを絶つかのように、ご飯を食べたら、すぐに奥の部屋に行って、ゲームを黙々としていた。
昔、遊んでいた時のような関係は、そんなものは初めからなかったと言わんばかりに変化してしまったように感じた。
とはいえ、他人の生き方に口出しをするつもりもなかった。
けれど、どこかで腹立たしさや寂しさを心配を感じてもいた。
そんないとこが結婚である。
お付き合いしている人がいて、同棲を始めたことは、母伝いで何となく聞いてはいた。
でも、正直、近年のいとこの姿を思い出してみて、実感がわかない。
実家の両親を車で迎えに行き、奥さんと4人で、式場へ向かった。
早めに着いて、親族控室で時間をつぶした。
式前、新郎であるいとこが控室にやって来た。
淡いブラウンのタキシードを着たいとこは、晴れやかな表情だった。
私たちと顔を合わせると、少し恥ずかしいからかはにかむ笑顔には、昔のよく遊んでいた時の面影が少し見えた、ような気がした。
決して、人と話すのが上手な方ではない。
それでも、この日のホストとして、精いっぱい何とか接しようとする姿勢が見えた。
これが、ばあちゃんちの奥の部屋で、一人黙々とゲームをしていた彼なのだろうか。
談笑の時間はあっという間に過ぎ、親族全員でのスナップ写真撮影を済ませた私たちは、チャペルへと向かった。
両家の親族・友人がチャペルへスタンバイし、式の開始を待った。
少しして、神父の進行のもと、式が始まった。
チャペル後方のドアが開き、新婦が入場してきた。
新婦を見るのは、これが初めて。
とてもきれいでやさしそうな、でも芯の強そうな人だった。
式は滞りなく進み、会場を移して、披露宴がスタートした。
披露宴は、両家の親族や小数の友人を招いての小規模なものだった。
司会の方の紹介によると、二人は、共通の友人を通して知り合い、音楽や好きなキャラクターなど、共通の趣味で中を深めていったという。
ささやかで、でも、二人の醸し出す朴訥とした優しく、穏やかな雰囲気が包み込む披露宴だった。
披露宴に参加して一番驚いたのが、食事の時間の長さだった。
大体(と言い切ってしまうのも憚られるが)、披露宴では、余興や両親への手紙やら写真撮影やらと、イベントに忙しく、その合間を縫って食事をとっているようなことが多かった。
でも、今回のいとこの披露宴では、そういったことが本人たちの考える必要最低限のみで、あとは談笑しながら食事を楽しむ時間に当てられていた。
そして、その中で、新郎新婦の座る席が各テーブルに設けられていて、料理が運ばれるたびに、テーブルを移動しながら、新郎新婦も一緒に談笑に加わるのである。
このスタイルは初めてだったので、かなり新鮮だった。
新婦が、「ここのおいしい料理は絶対に食べたいと思ったんです。」と笑顔で茶目っ気たっぷりに応えてくれたのがほほえましかった。
きっと正直で素直な人なんだろう。
披露宴の細かい部分に関しては、おそらく新婦が中心となって計画を進めて言ったの違いない。
けれど、私には、あのお世辞にもコミュニケーションが上手とは言えないいとこが、このスタイルに賛成したことが何よりのサプライズだった。
料理ごとにテーブルを移動して、それぞれのテーブルで話をしなければいけないのである。
これまでに私が見てきたいとこであるならば、これはなかなかハードルの高いことのように思えた。
でも、私たちと一緒に食事をしながら、談笑をし、同じ時間を過ごすいとこは、確かに幸せそうで、新婦の方を見て、にこにこ(にやにや?笑)したり、とても微笑ましかった。
きっと、新婦との出会いが、いとこを変えたんじゃないだろうか。
ひょっとしたら、いとことの出会いが、新婦を変えたという側面もあるのかもしれない。
それについては、この日一日では、私にはわからないことだけれども。
でも、確かに変わったように見えた。
この日、私の目に映っていたいとこは、昔、無邪気に遊んでいた、人と関わることを楽しんでいたあの頃の姿に近かった。
控室で式前に感じたことは、気のせいなんかじゃないんだと思う。
人との出会いが人生を変える。
よく聞く言葉だけれど、それを目の当たりにしたような気分だった。
あっという間の3時間ほどだった。
あっという間に感じるってことは、それだけ充実した時間だったんだと思う。
「来てくれた人とその時間を大切にしたい」という二人の気持ちがそのまま形になったようないい式だった。
いとこの変化に嬉しく、どこかホッとしたような気持にもなった。
出会いのすばらしさ、出会いの大切さを改めて感じた一日になった。