小学校教員にょんの日々ログ

毎日の出来事や考え、思ったことなどとにかくアウトプット!

learn × creation③ 165

対話型鑑賞のワークショップ後、

参加者の方やファシリテーターの方とあれこれお話をしていると、

ずいぶん時間が経ってしまい、

予定していたシンポジウムには、

終盤の質疑応答の部分しか聞くことができず。

早めの昼食をとり、

昼からもう一つのメインの目的であるワークショップの整理券をもらうために、

会場の教室へと向かった。

教室前に行くと、もうすでにたくさんの人が並んでいた。

何とか滑り込みセーフで参加するための整理券をもらうことができた。

昼から参加したこのワークショップは、

 

アメリカプロジェクト型学習先端校ハイ・テック・ハイの

 現役教師によるプロトタイプ体験ワークショップ」

 

以前から、対話型鑑賞と同じく、プロジェクト型学習(PBL)に興味があり、

こちらも実践に取り入れられたら、という思いから参加した。

講師は、ハイ・テック・ハイの高校教諭ジョン・サントスと

同じく、ハイ・テック・ハイの小学校教諭ジャメル・ジョーンズ。

 

ワークショップが始まると、まずはグループでの簡単な自己紹介。

それが済んだら、

「あなたが本当に何かを学んだ時のことを書き出してみましょう。」

という問いを各自で3分間ふり返り。

これは、次の3点について振り返るようにとあった。

 

・そこには誰がいましたか。

・何が起こりましたか。

・なぜその時のことを覚えているのですか。

 

書き出して、グループで共有してみて思ったことが2つある。

1つ目は、このふり返りで、自分の本当の意味での「学び」を

メタ認知するきっかけになるなあということ。

2つ目は、その「学び」の体験を他者と共有することで、

「深い学び」には、どんな共通項があるのかについて、

知ることができるということ。

PBLという手法を体験する前に、

まず、「深い学び」とはどういったものなのか、

共通認識を持つことができた。

 

ここまでがウォーミングアップ。

この後、プロトタイピングの重要性について以下のような説明があった。

 

PBLは単に美しく適切なものを作ることだけではありません。

それはまた本質的な問いや問題の解決方法でもあり、

美しく適切なものをどのように作るかを考え出すことです。

 

計画とプロトタイピングなしでは生徒たちは指示に従うのみになってしまいます。私たちは次の世代の子たちにただ指示に従うだけの人間になってほしくないのです。

 

 PBLのゴールとして、なんらかの成果物を作ることは、

ゴールであって、ゴールでないということか。

むしろ、ゴールまでのプロセスにもゴールと同等か、

それ以上の価値があって、

そのプロセスの中で、子どもたちは問題解決の方法を学んでいく。

そして、その計画も自分たちで立て、

プロトタイピングすることで、計画を修正し、

ゴールへの精度を上げていく。

 

プロトタイピングは、モデル学習と同義なのかなと感じた。

これまでずっと取り組んできた国語科の研究と似ているのか?

 

①子どもたちが学びたいと思える魅力的なゴールの設定

②ゴールへたどり着くために、何が必要かバックワードデザインでの計画

③教科書教材で必要な知識や技能の習得(モデル学習)

④自分のゴールに向かって、③で得たものを生かして、各自でゴールに向かって学習

⑤できた作品を子どもたち同士で相互評価し、推敲・改良

⑥発表・交流

⑦ふり返り

 

国語の授業は、この流れをベースにしている。

そもそもPBLに興味を持ったのも、

もしかしたら、自分が続けてきた国語研究との

共通点を感じていたからなのかもしれない。

 

しかし、PBLでは、私が普段やっている国語よりも、

各段に子どもたち主体で、ゴールが魅力的で幅広く、社会とつながっている。

そう感じる。

 

プロトタイピングの重要性の後には、

PBLの教室でよくある二つの問題について。

 

・失敗のない、やるだけの活動で結果が簡単に予想できる

・指示の多すぎる”プロジェクト”

 

インパクト:生徒たちは計画することや協働して問題解決にあたることを理解するのに苦労します

 

「活動あって学びなし」という言葉は、

以前から日本にもある。

これまで以上に、教師としての「在り方」が

問われると思った。 

良かれと思っての教師の過度の介入が、

子どもたちの成長を妨げることにつながるということは、

常に自覚しなければいけない。

 

こうしたPBLでありがちな問題を解決するためには、

プロジェクトの計画時に、以下のことが含まれているかに

気をつける必要があるということだった。

 

・調査検討、計画とデザイン

・プロトタイピングとテスト

・シェアと建設的批評

・最終制作

・自分の作品を発表する

・ふり返り

 

「どんな方法でも」「何がテーマでも」ということではない。

全て自由というのもまた、子どもたちの学びを妨げることになる。

 そのバランスが重要なのだ。

 

ここまでが概要の説明で、

ここから実際にグループでのワークショップに入っていった。

この日のテーマが発表される。

 

「デザインとプロトタイピングチャレンジ

 ハイヒールのデザインをし、テーブルにある材料を使って

 ハイヒールのプロトタイプを作る」

 

ハ、ハイヒール!?

いきなりびっくりした。

当然、場の誰もがハイヒールなんて作ったことがない。

戸惑う私たちをよそに、次のスライドで条件が示された。

 

計画・デザイン(5分)

→制作(20分)

→建設的自己批評(5分)

→制作続き(15分)

→作品発表(5分)

 

成功の基準

・靴

・履くことができ、耐久性がある

・5cmの高さのヒール

・見た目が美しい(困惑ではなく笑顔を生むもの)

・支えなしで履くことができる

・同じ形のペアでなければいけない

 

かくしてワークショップは始まった。

時間が足りない足りない。

でも、グループのメンバーで知恵を出し合って、

試行錯誤を繰り返しながら、

何とかハイヒールを完成させた。

2足は、時間切れで作れなかった。

完成後は、発表の時間。

ここでは、できたハイヒールのブランド名、その由来、

工夫したポイントなどをウォーキングと共に紹介する。

一番足のサイズが大きい人で作るという条件もあり、

グループのウォーキングモデルは私が務めることになった。

 

各グループの発表後、全体でのリフレクションがあった。

そこでスライドに示されていたことは、

どれもすごく重要なことで、今回の体験をしっかり価値づけられた。

 

私たち(講師)の気づき ~先生たちがしていたこと~

・即興

・インターネットで事例を検索

・プロセスへの自主的な取り組み(エンゲージメント)

・自然発生的な役割の創出

・クリエイティブなデザインとアプローチ

・奮闘!試行錯誤

・何人かは条件を無視。一方で何人かは条件をかなり重視。

・テストメソッドとデザイン

・協働・激励・学びの共有

・他のグループを見てインスピレーションを得る

・笑い・プロセスを楽しむ

・多様なアウトカム―予測可能なアウトカムではない

 

どれも、確かにグループの中で起こっていたことだった。

(うちのグループはインターネットで事例検索はなかったが)

このリフレクションの良さは、「学び方」を「学ぶ」というところだと思う。

これからより重要になってくる

「何を学ぶか」ではない「どう学ぶか」に

フォーカスしている。

「どう学ぶか」が積み重なると、

子どもたちの中には、課題解決のための引き出しが増えていく。

それは、未知の課題に出会った時に、

そこにどう立ち向かうか考えるための武器になる。

出来合いの問いに答えを出すのではなく、

答えのない問いに向き合い、

考え続けなければいけない

これからの予測困難な時代に

必要な力に直結していると思った。

 

作ったハイヒールは、記念にもらった。

2学期、そっと教室の隅に飾っておこうと思った。