当選。 148
「先生、先生~!この中から5枚選んで~!」
休み時間、一人の男子と女子が私のところへやってきた。
女の子の手には、折り紙で作ったらしい箱があり、
その中には、スシローのすしネタのマグロくらいの大きさの折り紙が、
無数に入っている。
どうやら、その中から、好きに5枚選んで取れということらしい。
何が目的か皆目見当つかなかったが、
二人は何が楽しいのか全く分からないが、
ものすごく楽しそうだったので、5枚選んでつかんだ。
「かして。」
というので、選んだ5枚を彼らに渡した。
二人は私が渡した5枚の折り紙を次々にめくって裏を確認し、
「ああ、はずれやな。」
「やっぱりな。」
などとしゃべっている。
いや、全然わからんし!!
仲間に入れて!!その会話の意味を教えて!!
…と心で思いながら、黙ってその様子を見ていた。
すると、最後の5枚目をめくったときに、
「おお!!」と歓声を上げる二人。
「当たってる!!!先生、当たり出した!!」
何か知らんが、当たりを出したらしい。
「すげー!」とか言ってくれる。
あ…ありがとう。
そして、
「先生、おめでとう!明日あげるから楽しみにしといて!」
そう言い残して、二人は席へと戻っていった。
…
…
…
何をやねん!!!!
一番重要なとこ!!
何をくれるねん!!
というか、そのくじみたいなんが、何なのかもまだわかってへんぞ!
先生が、分かってるのは、
「何もわかってない」ってことだけやぞ!
無知の知や!!
…ってそんなんどうでもええわ!!
そして、今日―。
特段期待していたわけではない。
でも、気にしていなかったかと言われれば、嘘だ。
頭の片隅には、前日のやりとりが残っている。
何をくれるというのか。
…ひょっとして、明日誕生日やから、
サプライズで誕生日プレゼントとか??
いやー、まさかな!
でも、一度考え出すと、その考えが頭から離れない。
職員室から教室へ戻る時も、毎回、
「これ、教室戻ったら、『ハッピーバースデイ!!』的なことやったりする?」
と妄想してしまった。
しかし、その妄想は、妄想のままだった。
午前中が終わる…。
昼休みが終わる…。
5時間目が終わる…。
6時間目が終わる…。
終わりの会になる…。
起立。さようならー!
はーい、さようならー!また明日ー!!
いや、何もないんかいっ!!
一日ソワソワしてた、
そして、それをなんもない感じにカモフラージュしてた
自分がすっごい恥ずかしいわ!!
もう穴があったら入りたい!!
顔から火出るわ!!
えー、…何もありませんでした。