小学校教員にょんの日々ログ

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12冊目「七つの会議」 88

前回、まさかの本を手に入れるまでのエピソードで

一記事書いてしまった。

そんなつもりじゃなかったのに…。

でも、そういう手に入れるときの思い出も含めて、

読書記録として残しておくことにも、

それなりに意味があると信じて。

 

さて、そんなわけで本年度12冊目の読了はこちら。

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「七つの会議/池井戸潤

今や言わずと知れたベストセラー作家の池井戸潤の小説。

池井戸潤と言えば、「半沢直樹」や「陸王」なんかもドラマ化されて、

映像化が多いイメージ。

今回の「七つの会議」、

私自身、先にテレビCMで映画の方のイメージを知っていたので、

読み進めながら、頭の中では、野村萬斎が躍動していた。

(他のキャストさんは知らない…)

 

前回の記事で書いたように、

この本は石垣島から大阪までの帰りの飛行機の中での

暇つぶしとして購入した。

 

しかし、そこはさすが池井戸さん。

読ませる読ませる。

体は疲れているはずなのに、

全く眠くならない。

どころか、読み進めるたびに、

目は冴えていき、

ページをめくる手が止められない。

これは一気読みの予感。

そんな私の予感はずばり的中する。

飛行機の中で三分の一ほど読了。

関空から枚方市駅までの高速バスの中で、

さらに三分の一ほど読了。

そして、自宅に着いてからも深夜まで読み進め、

結局この日一日で丸々一冊読了してしまった。

恐るべきリーダビリティ。

 

本作は、東京建電という会社を舞台にして、

タイトル通り、様々な会議を通じて、

会社の不正が徐々に明らかになっていく話である。

 

一話ごとに、一つの会議が取り上げられていて、

短編としても毎回十分な読みごたえがある。

が、それぞれの短編同士が、後半に進むにつれてつながり、

その関連性が明らかになっていく。

 

序盤では、わずかな違和感や引っ掛かりだったほころびが、

それぞれの立場や性質の違う会議を重ねていくことで、

親会社のソニックまでをも巻き込んだ不正へと展開していく。

 

メインとなるその不正については、

ネタバレになるので伏せるが、

それぞれの会議において、

新たな情報が少しずつ明らかになり、

不正の輪郭が徐々に外側から立ち上ってくる展開は、

見事の一言。

 

そして、それぞれの会議は毎回

違う人物の視点で描かれていくのも、大きな魅力だ。

業績トップのエースの裏に隠された背景。

しがないOLの決意の裏にある気持ち。

どの人物も人間臭く、清濁併せて描かれている。

働く「目的」もそのために撮る「手段」も「考え方」も違う。

正義の反対は、「もう一つの正義」とはよく言うが、

それぞれの正義ゆえにぶつかり合う登場人物たち。

不正が許されるわけではないが、

それぞれの正義を通して、物語を見た時に、

それは自分自身への問いかけに変わる。

「自分にとって、働くとは?正義とは?」

そんなことも考えさせられた話だった。

 

万年窓際係長である八角(やすみ)の心に秘めた思いとは、

八角の正義は、どういう結末を迎えるのか、

それぞれの登場人物の正義はどんな決着を見るのか。

 

様々な視点から楽しめる超一級のエンターテインメント作品だ。