気持ちで十分です。65
休み時間、ある男子が私のところへやってきた。
「先生、肩叩いてあげるわ。」
優しい子だ。
別に肩が凝っていたわけではないが、
「ありがとう。」と言って、されるがままにしていた。
「うわ~っ、めっちゃ気持ちいいわあ!!」
ちょっと大げさなぐらい気持ちいいアピールをした。
すると、
ヘヘヘと笑いながら、さらに張り切って肩を叩く男子。
休み時間だから、遊びに行けばいいのに、
せっせと私の肩を叩いている。
かわいい子だ…
ん?
叩く手増えてない?
何だか肩を叩く手のリズムが倍のスピードになったように感じたのだ。
ダ ダ ダ ダ
だったのが、
ダダダダダダダダ
って感じで。
ふり返ると、やっぱり増えていた。
肩を叩く男子は二人になっていた。
「オレも叩いてあげるわ、先生!」
「あああ、ええわあ。気持ちいい~!!」
「じゃあ、オレも叩くーっ!」
「んじゃ、オレもー!!」
「オレも叩く叩くー!!」
「先生、オレも叩いたげるわー!!」
増えに増えたり肩叩きボーイたち。
その数、7人。
もはや肩叩きのレベルを遥かに超えていた。
低周波治療器か。
シックスパッドか。
普通に「ワレワレハウチュウジンダ」ができるわ。
面白がって私の肩を叩きまくる男子たち。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ…
って、今ね、丸つけ中!!!
この揺れやとね、何か先生アル中みたいに手が震えてね、
丸がきれいにえがけないの!!
だから、うん、気持ちはうれしい。
ありがとう!
でもね、もうやめてくれるかな?
そう言って、
「お~ま~え~ら~…」
と振り返ると、蜘蛛の子を散らすように退散する男子たち。
かわいいやつらよのお。