あちゃあ! 43
偶然って怖い。
全く自分の理解の外にあったことが意味を持ち始め、
真実の輪郭がはっきりとし出す。
休み時間、職員室に戻っていた私は、
仕事を終えて、少し早めに教室に戻った。
まだ10分ほど残っていた休み時間、
教室にはまばらに子どもたちが残っていて、
思い思いに休み時間を楽しんでいた。
そんな子供たちの姿を視界の端にとらえながら、
自分の机へと向かった。
机の前まで来たとき、
偶然、私の席の前で、黙々と画用紙に何かを書きつける女の子が二人いた。
見ようとしたわけでは断じてない。
でも私の目は、なんだか吸い寄せられるように画用紙の上の字をとらえた。
「にょん先生、今までありがとう!……」
あああああああああああああああああああああ!!!!!
担任失格や!!!
ごめんやで!!
ほんっまに、見るつもりなんてなかってん!
たまったま、目がスーッとそっちに向いただけやねん!!
心の中で激しく後悔しながら、平成を装う。
ちがう!平静や!
冷静になれ!
高鳴る鼓動を理性で押さえつけ、
席に着いた。
宿題の丸つけをするふりをして、
周辺視野で女の子たちの様子をうかがう。
目前の作業に集中しているからだろうか。
すぐそこにいる私に気付いていない様子。
これはまずい!!
こんな状況を涼しい顔でやり過ごせるほどの、
演技力も肝っ玉も持ち合わせていない。
そこに救世主が現れた。
男子たちである。
彼らは、でかい声で「せんせぇ~!!」と言いながらやってきた。
その声のおかげで私の存在に気付いたらしい女の子たちは、
慌てて机の上を片付けていた。
ホッと一安心の私。
とりあえず、気まずい状況は脱した。
男子たちとたわいない会話をした後、
落ち着いた私は、丸つけを始めた。
少しすると、件の女の子たちが私のところにやってきた。
「先生、画用紙7枚ください。」
何に使うのかはよくわからなかったが、快諾して、画用紙を渡した。
その後、丸つけに没頭して、少したった頃、
首のストレッチをと思い、顔を上げて教室意を見渡した。
すると、数人の女の子たちが、後ろのロッカーの上に乗り、
背伸びをして、掲示板の上の方に、
折り紙やら画用紙やらを画鋲でとめている。
「何だろう?」
気になって、じっと見ていると、
折り紙には、一枚につき、一つ文字が書かれていることに気付いた。
しかし、画用紙がその間に断続的に貼られていて、つなげて読むことができない。
にょ□□生大す□!□これか□□がん□□□□ださい!
って、なんとなく読めるーーーーーーーっ!!!!
あかん!!これ、軽ーい推理で読めるやつや!!
ぼくには□に入る文字が浮かび上がって見える気がするー!!
うれし恥ずかし朝帰りな私は、子どもたちに聞いてみた。
「あれ、なんて書いてるん?全然読まれへんやん。」
すると、子どもたち。
「いいからいいから。まだ内緒!」
ですって。
かわいすぎやろーーーーーー(笑)!!!!
この謎がいつ解けるのかわからないが、
私は命を懸けて知らんぷりをする!!
この謎が明らかになるまで!!!!